ヘンリーの法則とは、一定の温度で、液体に溶ける気体の量は、その気体の圧力に比例するという法則です。
少し難しく聞こえますが、身近なところでは炭酸飲料を開けたときの泡、ダイビングで注意される減圧症、水槽の酸素管理などに関係しています。
この記事でわかること
- ヘンリーの法則の基本
- 「圧力が高いほど気体がよく溶ける」の意味
- 炭酸飲料やダイビングでの身近な例
- 使うときに注意したい温度や気体の種類の話
ヘンリーの法則とは
ヘンリーの法則は、気体が液体にどれだけ溶けるかを説明する法則です。
たとえば、水の上に二酸化炭素があるとします。このとき、二酸化炭素の圧力が高くなるほど、水に溶け込む二酸化炭素の量も多くなります。逆に、圧力が下がると、液体の中にいられなくなった気体が外へ出てきます。
この関係を簡単に式で表すと、次のようになります。
C = kH × P
溶ける気体の濃度 C は、気体の圧力 P に比例する
ここでのポイントは、式そのものを暗記することよりも、圧力が高いほど気体は液体に溶けやすく、圧力が低くなると気体は出てきやすいと理解することです。
なお、ヘンリー定数の書き方にはいくつかの流儀があります。教科書や分野によって、比例定数をかける形で書く場合もあれば、逆数の形で書く場合もあります。この記事では、考え方をつかみやすいように「溶ける量は圧力に比例する」という形で説明します。
なぜ圧力が高いと気体がよく溶けるのか
液体の表面では、気体の分子が液体の中に入り込んだり、液体の中から外へ出ていったりしています。
気体の圧力が高い状態では、液体の表面にぶつかる気体分子の数が増えます。そのため、液体の中へ入っていく分子も増え、結果として多くの気体が溶けた状態になります。
反対に、圧力が低くなると、液体の中に溶けていた気体が外へ出ていきやすくなります。炭酸飲料のふたを開けた瞬間に泡が出るのは、この変化を身近に見られる例です。
炭酸飲料で考えるヘンリーの法則
炭酸飲料には、二酸化炭素が溶け込んでいます。未開封のペットボトルや缶の中は圧力が高く保たれているため、二酸化炭素が液体の中に多く溶けた状態になっています。
ところが、ふたを開けると中の圧力が一気に下がります。すると、今まで液体の中に溶けていた二酸化炭素が、その圧力では溶けきれなくなり、泡として外へ出てきます。
炭酸飲料で起きていること
- 密閉されている間は圧力が高い
- 高い圧力のもとで二酸化炭素が多く溶けている
- ふたを開けると圧力が下がる
- 溶けきれなくなった二酸化炭素が泡として出てくる
振った炭酸飲料を開けると勢いよく泡が出るのは、液体の中に小さな泡のきっかけがたくさんできるためです。圧力が下がったときに、そこから二酸化炭素が一気に出やすくなります。
ダイビングとヘンリーの法則
ヘンリーの法則は、ダイビングでも重要です。
水中では、深く潜るほど周囲の圧力が高くなります。圧力が高い環境では、呼吸によって体内に入った窒素などの気体が、血液や体の組織により多く溶け込みます。
その後、急に水面へ上がると周囲の圧力が急激に下がります。すると、体内に溶けていた気体が泡になって出てきやすくなります。これが減圧症に関係します。
そのため、ダイビングでは急浮上を避け、ゆっくり浮上したり、必要に応じて安全停止を行ったりします。体の中に溶けた気体を少しずつ外へ逃がすためです。
水槽や川の酸素にも関係する
魚が暮らす水槽や川では、水の中に酸素が溶けている必要があります。水に溶けた酸素を、溶存酸素と呼びます。
酸素も気体なので、基本的にはヘンリーの法則の考え方が関係します。水面にある酸素の分圧が高ければ、水に溶ける酸素の量も増えやすくなります。
ただし、水槽や自然の水では、温度、水の動き、生き物の呼吸、植物の光合成、有機物の分解など、ほかの要因も大きく関わります。ヘンリーの法則だけで全部を説明できるわけではありません。
温度が変わるとどうなるのか
ヘンリーの法則でよく出てくる条件が「一定温度で」という部分です。
多くの気体は、温度が上がると液体に溶けにくくなります。冷たい炭酸飲料のほうが炭酸を感じやすく、ぬるくなると気が抜けたように感じやすいのは、この温度の影響も関係しています。
つまり、気体の溶けやすさを考えるときは、圧力だけでなく温度も一緒に見る必要があります。
| 条件 | 気体の溶けやすさ | 身近な例 |
|---|---|---|
| 圧力が高い | 溶けやすくなる | 未開封の炭酸飲料 |
| 圧力が低い | 外へ出やすくなる | ふたを開けた炭酸飲料の泡 |
| 温度が低い | 多くの気体は溶けやすい | 冷えた炭酸飲料 |
| 温度が高い | 多くの気体は溶けにくい | ぬるくなった炭酸飲料 |
ヘンリーの法則が成り立ちやすい条件
ヘンリーの法則はとても便利ですが、どんな場合でも完全にそのまま使えるわけではありません。
基本的には、気体が液体中で化学反応を起こしにくく、比較的うすく溶けている場合に使いやすい考え方です。高い圧力になりすぎる場合や、気体が水と反応する場合は、単純な比例関係からずれることがあります。
- 温度が一定であること
- 気体が液体と大きく反応しないこと
- 非常に高い圧力や濃い溶液ではないこと
- 気体ごとの溶けやすさの違いを考えること
たとえば、二酸化炭素は水に溶けるだけでなく一部が反応して炭酸の形にもなります。そのため、厳密に扱う場合は、単純な比例関係だけでなく化学平衡も考える必要があります。
ヘンリーの法則を一言で覚えるなら
圧力をかけると気体は液体に溶けやすくなり、圧力を下げると溶けていた気体は外へ出てきやすくなる。
この一文で覚えると、炭酸飲料、ダイビング、水中の酸素などの現象がつながって見えやすくなります。
まとめ
ヘンリーの法則は、一定温度で液体に溶ける気体の量が、その気体の圧力に比例するという法則です。
圧力が高いほど気体は液体に溶けやすく、圧力が下がると、溶けていた気体が外へ出てきやすくなります。炭酸飲料の泡は、この考え方を身近に感じられる代表的な例です。
一方で、実際の現象では温度、気体の種類、化学反応、液体の状態なども関係します。まずは「気体の溶ける量は圧力に比例する」という基本を押さえ、そのうえで条件による違いを見ていくと理解しやすくなります。
